PROJECT #01

プロジェクトストーリー

EC(電子商取引)サイトに豚肉を納入するという
新たな分野のビジネスで成功を目指す

  • 及川 真也

    食肉事業統括本部
    首都圏第2事業部
    営業2課

  • 溝内 裕子

    食肉事業統括本部
    首都圏第2事業部
    八千代PCグループ

  • 村松 滉生

    加工品事業統括本部
    首都圏加工品事業部
    食材加工品課

経済産業省の調査では飲料・酒類を含む食品のEC化率は2017年度で2.41%。食品の総売上の中でEC販売が占める数字はまださほど大きなものではない。それでも毎年少しずつ数字を増やしており、今後も伸びていくことが予想される。そんな中、JA全農ミートフーズも食品のECサイトへ商品を納入し、新たな市場開拓と拡大を狙っている途上にある。

SECTION 1.

新たに立ち上がったECサイトでの
豚肉販売に着手

JAの出展する農畜産物商談会で、JA全農ミートフーズのEコマース担当者である村松の先輩社員がECサイトのバイヤーと出会ったのは2016年のこと。村松は当時、その先輩社員につき、業務経験を積んでいた。そのときは、新たに食品ジャンルのECサイトを立ち上げるのに際し、豚肉やその加工品を販売しないかという話だった。大手ECサイトの新ビジネス、しかもメーカーは絞って販売したいという意向に、乗らない手はない。会社としてもECサイトへの納品は手を付けたことがない。成功すれば新たな道が開けると期待は高かった。

村松と先輩社員は、豚肉の加工品やガスパックにより消費期限が通常より長いノントレーの精肉など、元々あった商品を手始めに納品を開始する。その先輩社員はその後の人事異動で他部署への異動となり、後任はもともと一緒に仕事をしていた村松が担当することになった。先輩社員から引継ぎ、以後の業務に携わることとなる。取引先対応を担うことになった食材加工品課の村松は、引継ぎ後、その後も品目を増やしたいというECサイト側の要望を叶えるため、全国の工場から商品を手配していく。JA全農ミートフーズでは工場ごとに冷凍品や冷蔵品など、得意分野が異なるため、さまざまな商品を吟味して売れそうだ、と見込んだものを投入していった。こうして取扱品目は2年弱で40もの数に増え、豚肉販売では大きなシェアを獲得するに至ったのだった。中でもミンチ肉をトンネルフリーザーという機械で短時間で凍らせて作る「パラパラミンチ」はジッパー式の袋入り。使いたい分だけ使えて、新鮮さも保てる。宅配向きの商品だったこともあって好評を得た。一方、冷蔵の精肉では次第に課題があらわになっていった。

SECTION 2.

当初の話とは異なる規格の条件に
原料部門でギャップが発生

冷蔵の豚肉は元々あった商品を販売していたが、価格も高めであったため、手頃な価格で提案しやすいECサイト専用の規格で商品を作る方向になった。もちろん、品質も落とすわけにはいかない。村松が相談したのは原料の仕入れを担う及川。年齢も近い先輩で普段から気軽な話もしている仲だからこそ、「彼に相談してみよう」と考えたのは自然な流れだった。及川としても条件は悪くなく、「自分にわざわざ話を振ってくれたのだから」、とその期待に応えたい思いはあった。いくつかの候補の中から物量が増えても問題なく、また銘柄とまではいかなくても、◯◯県産とこだわりを謳えるものが良いだろうと秋田県産の豚肉をチョイス。取引先の担当者からも試食で好評を得て、工場で新たにこの豚肉を加工していくことに決まったのだった。

だが、そうすんなりとはいかない。商品を製造するため、部分肉を工場に投入する際、脂は何ミリの厚さで整形するなど、基本となる規格がある。しかし今回の商品では当初の予定とは話が異なり、基本のままではダメだということが判明する。先方とJA全農ミートフーズで、細部の条件の話がうまく噛み合っていなかったことが見えてきた。さらに求められる規格にすると予想より歩留まりが悪くなり、価格がネックになってくる。工場側でも手間がかかるために及川は工場と何度も話し合うことになった。しかもその工場では初めて扱う原料だったため、慣れないうちは戸惑いが大きく、注文量のばらつきも課題だった。例えばロース肉1本を加工するのならそこまで問題ではないが、通販ゆえに一度の注文は多くなく、定量でもない。少量のパック分しか必要ない場合、残った原料は余りとなってしまう。それに少しの作業しかないなら、人材の配置も考えなくてはならない。予め計画を組み立てている分、急な変更が効きにくいのだ。工場の製造調整担当者は営業からの頼みを受け、さらに工場にお願いしなければならないこともある。こうした計画を立てる溝内としても見逃せない問題だった。

SECTION 3.

工場との折衝やロスをなくす工夫
で危機を乗り越えていく

根本にあるのは感覚の差。これならいける、という食材加工品課と、もっと細かな詰めが必要だったのに、という原料部署側のギャップが思ったより大きかったのだ。その先にはお願いされればなんとかしなければ、と作業や人員配置の調整に苦慮する工場がいる。及川と村松は意見を戦わせながらも、改善策を探った。なんとかしなければこちらの損失が大きくなるばかりだった。

及川は産地や工場に、元の規格から少し変更する形での納品をお願いすることになった。工場側の苦労も重々理解はしているが、作業に慣れることで改善していける部分は大きいことも感じており、なんとか納得してもらうことに成功する。また、余りが出てしまう問題にはいくつかの対策も進めた。ECサイト用の独自規格ゆえに、原料が余っても他に転売しづらいのが難点だったが、余った分は冷凍の商品にしてそのECサイト内で販売することにした。さらに、肉が余るのは豚肉の主な6部位のうち、売れる部位とそうでない部位があるというのが大きい理由だ。そこで及川は産地と掛け合い、よく売れる部位はその部位単体でもオーダーできないかという交渉をスタート。原料のハンドリングを工夫することでロスを少なくしようと動いている。

SECTION 4.

冷蔵の豚肉が売上げランキングで
4位という好順位を得る

今は課題をどうクリアしようかと動いている面々だが、スタートからすべてうまくいくとは思ってはいない。今は工場にお願いする部分も大きいのは確かだが、手慣れてくればもっと加工も効率よくできるだろうし、ECサイトでの取り扱い量が増えればすべての部門にお金が落ち、みんなが笑顔になれるはず。そう信じてさまざまな改善に動いている。

肝心の商品の評価だが、この苦労している冷蔵の豚肉は消費者にはかなり好評で、サイトには好意的なレビューが並ぶ。消費者の具体的な声を知ることができるというのは、これまでにない新鮮さがあると同時に、良い評価がもらえれば嬉しいが、悪い評価がつけば売上に直結するため、気が抜けない。それでも2018年上期の売上げランキングでは冷蔵の豚肉の細切れが総合4位を獲得。飲料など重量があって通販に適した商品が上位に並ぶ中で、これは見事な結果といって良かった。通販での肉の販売はJA全農ミートフーズにとっても新しい分野であり、会社としても期待されている。初めてだからこそ予期せぬ思い違いや各部門のギャップがあらわになったといえるが、それも関わる部署がそれぞれ解決に向けて努力を続けている。EC販売を伸ばし、JA全農ミートフーズの新たなビジネスの柱とできるかどうかは、これからの工夫と努力次第。大きな成果を勝ち取るため、今後も懸命な取り組みが続く。